べんとう・弁当・BENTO

小さな空間に愛情と知恵を詰め込んだ“BENTO“

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ふたを開ける時のドキドキ感がたまらない。何の話かというと、弁当の話。日本の高校生の多くは、親がつくってくれた弁当を持って登校する。待ちに待った昼休み、弁当の出番である。今日はどんなおかずが入っているのだろう、アレが入っていたら嬉しいな、嫌いな野菜が入っていませんように…など、いろんな思いがぐるぐるする。そして、ふたを開けると、一喜一憂が待っている。家庭の弁当だけではない。会議の席で出される幕の内弁当や日本料理店のランチでいただく松花堂弁当、駅弁もまた然り。あの高揚感が弁当の魅力だと思うのだ。

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古い話になってしまうが、30年ほど前にLAの郊外にある小さな町で2週間だけホームステイをしたことがある。ランチに持たされたのは、ピーナッツバターを塗った食パン1枚とリンゴ1個。弁当文化で育った身には、いろんな意味でカルチャーショックだった。栄養バランスの問題うんぬんもあるが、何よりもあのドキドキ感がないのが寂しかった。見ても食べても楽しい弁当は、ランチの気分を華やいだものにしてくれるし、午後へのパワーをくれるからだ。

今でも忘れられない弁当のひとつに、中学校の遠足で見たクラスメートの“上田くんのおにぎり”がある。その日の上田くんの弁当は、顔くらいのサイズがある大きなおにぎりが1個。大きさもさることながら、驚いたのはその中身。1層目はウィンナー、2層目は玉子焼き、3層目は鶏のから揚げなど、弁当の定番おかずがおにぎりの具材として握られていたのだ。しかも、屋外で箸を使わずに食べられるのは便利だ。そのおにぎりが学年で評判となり、上田くんのお母さんの元には握り方のコツを教えてもらいに行く人までいたと聞く。

何より弁当の表現は自由だ。決まりごとは一切ない。気を遣うとすれば、食品が傷まないように冷ましてから、ふたをしたり、包んだりすることくらいだろうか。食べる人の笑顔を思い浮かべながら、つくる人は限られた小さな空間にアイディアを盛り込む。上田くんのおにぎりも、キャラ弁やメッセージ弁当といったビジュアル系弁当が生まれた背景も、そこにある。

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そして弁当がすごいのは、冷たくてもおいしいことにある。冷めると全体的に味は薄く感じるため、弁当のおかずは少し濃い味つけにする。濃いばかりでは飽きるので、薄味のものも効果的に加える。このバランス感覚は、冷たい料理と温かい料理が混在する和食が家庭料理のベースになっているため、ごく自然と受け継がれてきたことのように思う。

最近はファッション業界を中心にエシカルなもの・ことが注目されているが、弁当のある生活もまた、エシカルといえるかもしれない。弁当づくりは時間との闘いだ。あらかじめ献立をたてる、食材をまとめ買いする、おかずをつくり置きしておくといった、時間も食材もムダにしない段取りが必要になるからだ。また、前夜の残りものにひと工夫して新たに一品つくる、使い捨て容器ではなく弁当箱や箸などを洗って使うという考えも、エシカルな世界観につながっている。

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時代が変化しても、家庭の弁当の基本は愛情であることに変わりはない。食材の安全安心や栄養バランスを考慮し、毎日飽きないようにこしらえる。食べる人がつくる人の思いをちゃんと感じているからこそ、空になった弁当箱が「今日もありがとう」の気持ちを伝える。弁当をめぐる時間は、家族の笑顔をつなぐ大切なコミュニケーションの時間でもあるのだ。

 

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WRITER 小西由稀:北海道在住のライター。北海道の食の現場を取材し、生産者、職人、料理人、そして北海道のおいしい食の魅力を、さまざまな媒体で発信中。著書に「おいしい札幌出張」シリーズ、「食のつくりびと」など。

 

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