中世都市 サント・ステファノ

santstefano2サント・ステファノ・ディ・セサニオ

中世の城塞都市に蘇る、本物の味と暮らし

ローマ空港から北東へ車で約2時間、イタリア中部のアブルッツォ州は、グラン・サッソ・ディタリア(イタリアの大岩の意味)の山岳地帯だ。中世は羊毛産業が栄えたが土壌は余り豊かではなく、近年はイタリアでも貧しい地域となった。1950年代以降に工業化で、この一帯の人々は都市へ移住した。このように廃村となった村が、現在イタリア全土に15000近くもあるという。

中でも山頂の城塞都市は、その立地の不便さもあり、多くが過疎で衰退した。その存在すら忘れられた中世の石組みづくりのままの村々が、近代化に洗われることなく今日に残っている。グラン・サッソの国立公園にあり、標高1250mの山頂にあるサント・ステファノ・ディ・セサリオもその一つ。ローマ時代にその基礎を築かれたが、村の建物の大半は15世紀のもの。メディチ家の傘下で織物のための牧畜を生業としていた。

2003年、バイク旅行をしていた資産家のダニエル・キルグレン氏がこの村に迷い込んだ時の人口はわずか50人。村は城壁の石門には誇らしげにメディチの家紋を掲げた、中世の面影を色濃く漂わせたまま朽ちようとしていた。この村に一目惚れしたキルグレン氏は、村の守護神の名前をとった開発会社Sextantio(セクタンティオ)を設立、行政とかけあい新しい建設を制限する規制を通し、村の主だった建物を購入、村を再生するプロジェクトを立ち上げる。

6生きた村のアイデンティティを再び

そして、2005年にホテル・Diffuso(ディフューゾ)を開業。村の入り口に近い家畜小屋をレセプションや事務所に、村に点在する家をそれぞれ客室に改造していった。現在は6棟に客室25室、レストラン2軒、イベント・ホール、カフェ、ギフト・ショップ、スパなどが完成している。これらの施設は村の中に点在して溶け込んでおり、一軒のホテルにはなっていない。それぞれの建物はオリジナルの構造を活かしつつ、冷暖房や設備の整った浴室、インターネットなどが設置されているが、内装は中世の民家をそのまま再現している。

このユニークなホテルによって村は話題を集め、他にレストランやバー、土産物店、民宿などが開業。流出する一方だった村人口が130人に増えた。

「観光客用のディズニーランドのような村づくりではなく、その風土と生活が生み出した本物の姿を再現したい。ですから、村の老人や地元の博物館などのアドバイスを受け、修復の建材も地元のものを使い、デザインもオリジナルに忠実に再生しています。イタリアでは近代化に急ぐあまり、古い建物を壊し安普請のビルを量産した都市開発が一部で行なわれ、景観だけでなく培われてきた文化そのものを壊してしまったケースも。ですから、器としての村だけでなく伝統文化をも再生し、生きた村のアイデンティティを取り戻すことが課題です」とキルグレン氏は語る。

このため、地元の民芸、食べ物などの振興にも力を入れている。中世からの伝統を誇る織物技術で、ホテルなどの内装に使う布や土産物などがつくられるようになった。また、周辺の農地では昔ながらのやり方で、レンズ豆、サフラン、唐辛子、ハーブなどが育てられている。名産のサラミ、チーズなども周辺の農家が自家製のものを販売している。これら地元の食材を使った伝統料理が村のレストランに並び、週末などはローマから本物の、スロー・フードの味を求めて食べに来る都会人も。

santstefano3中世への優雅なるタイム・トリップ 

ローマから高速道路をおりて、山岳の道に入ると山頂に城塞都市がぽつぽつと出現する。チーズ農家などに寄り道したため、サント・ステファノ・ディ・セサニオを見つけた時には既に日は傾き始めていた。それは、夕陽で蜜色に輝く畑の中に、蜃気楼のように浮かびあがっていた。山頂の村は、細い路地や階段がひしめくが歩いて回れるほどの大きさ。レセプションで渡された鍵は、手の平より大きくずっしりと重い。それで、客室の家の古い木製の頑丈な扉を開ける。

暖炉のあるこじんまりした居間。急な階段が2階の寝室に続く。テーブルにウxルカム・ティーが用意されていたが、どこからか漂ってくる美味しそうな香りに誘われてレストランへ。

ホテルには庶民的な食堂とダイニング・ルームと二つのレストランがある。後者は広場を抜けた市民ホールの隣にあり、ランプと蝋燭で幻想的にライティングされていた。レンズ豆のスープがほっこりと優しい味わい。ローズマリーが香るロースト・ラム。新鮮な生クリームのかかった杏のタルト。芳醇な赤ワイン。

不可思議な陰影を投げかける石畳の路地を部屋へ戻る。ほんの数分の距離が、中世をさまよっているように長く感じた。部屋の窓から未知の草木の匂いを孕んだ山の夜風。耳をすますと風にのってかすかに遠吠えが聞こえる。村には狼男の伝説が語り継がれているという。満月の光で満たされた部屋で眠りにつきながら、夢の中に現れた狼男は、キルグレン氏だった。

 

kokoshinoda

Writer  Koko Shinoda:International Journalist covering from serial publications on monthly magazines to branding & marketing oversea projects in various field. She flies all over the world to always find new value and story. Publications on MY LIFE IN THE GLOBAL VILLAGE, WORLD IS SOOO DELICIOUS!

 

*本原稿はOCTONLINE.JPの英語記事に日本語版を掲載しています。
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